【大学院・卒業生インタビュー】第1回 青森県立郷土館研究員・和山大輔さん

第1回は、青森県立郷土館研究員の和山大輔さんにお話を伺いました。
普段の仕事内容や学生へのアドバイスなど、とても充実した回答を頂きました。
和山さん、ご協力有難うございました!


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●まずは、ご自身について教えてください。

和山大輔(わやまだいすけ)
1985年7月14日生まれ
青森県八戸市出身
卒論、修論ともにモーリス・ドニを研究し、修論では特に《カトリックの神秘》を取り上げ、宗教主題の作品における私的側面の混在について考察した。
三味線とコーヒーが趣味。

2008年3月 第一文学部美術史学専修卒業
2008年4月 文学研究科美術史学専攻入学
2011年3月 文学研究科美術史学専攻修了
2011年4月 青森県庁入庁。都市計画課でまちづくり関係の業務を担当。
2013年4月 青森県教育庁三八教育事務所に出向。総務課で給与事務を担当。
2016年4月 青森県立郷土館へ異動。研究員として美術分野を担当(現職)。

●現在の勤務先について教えてください。

名称:青森県立郷土館
所在地:〒030-0802青森県青森市本町2-8-14
TEL:017-777-1585
公式HP:「青森県立郷土館デジタルミュージアム

当館は「社会教育施設として、資料の収集や保管・展示、調査研究、教育普及などの活動を通して、青森県の歴史や自然などについて、誰もが幅広く理解できるよう、支援すること」を使命とする総合博物館です。
1931年に建造された旧第五十九銀行青森支店(現・青森銀行)の建物を活用し、1973年に開館しました。建物は2004年に国の重要有形文化財(建造物)に指定されています。

●普段、どんなお仕事をされていますか。

以下のような業務を担当しています。

【事務に関すること】
物品管理、講師派遣依頼対応、印刷物発送、資料貸出手続き

【資料収集・保存に関すること】
資料調査・受入、収蔵資料管理

【調査・研究に関すること】
青森県の近代絵画史の研究(洋画家・松木満史を中心に)、研究紀要執筆

【展示・教育普及に関すること】
展示会企画、展示会会場設営、新聞等の連載記事執筆、レファレンス対応、アウトリーチ活動(まち歩きイベント、小学校への出前授業など)、県民向け講座

調査・研究以外の業務は案件があるごとに日々対応します。その中から時間を捻出して研究に充てるという感じです。現在の研究対象については、5年程度をかけて調査していきたいと思っています。その年の成果は研究紀要で発表していく予定です。

●苦労や、大変なことはありますか。

多くの公立博物館・美術館で同様かと思いますが、業務が多岐に渡るため、繁忙期には研究に時間を割けないことがあります。
また、総合博物館であるために美術が歴史分野の中に包含され、美術専用の展示室がありません。そのため、常設展示の企画及び管理の経験が積みづらい環境です。
そのほか、当館では学芸員が展覧会の会場設営を行うため、力仕事が意外に多いです。

●やり甲斐はどんなことですか。

仕事が多岐に渡る分、研究だけではなく館の事業全体に関わることができます。
どのような学芸員を目指すかによると思いますが、これはいわゆる雑芸員の良い面ではないかと思っています。事務分担上、私は教育普及業務の担当にはなっていませんが、出前授業などの館外活動に同行することもあります。そうしたときに小学校の児童の率直な反応に触れ、「先生これはどうなの?」などと質問を受けたりするのは、机上だけでは経験できない楽しみです。

研究の面では、新発見に遭遇する機会が多いです。
青森県の近代絵画史は先行研究自体が少なく、かつ事実関係や固有名詞等に錯誤が散見される状況です。例えば研究対象の洋画家・松木満史(まつきまんし)の年譜で「コロラシェグラン、ショミエールで学ぶ」という記述に行き当たりました。調べてみると、これらはそれぞれアカデミー・コラロッシAcadémie Colarossiとアカデミー・ド・ラ・グランド・ショミエールAcadémie de la Grande Chaumièreであることがわかりました。つまり、当時の表記に寄せた上で正しく書くとすると「コラロシェ、グランショミエール」だったわけです。
こうした基礎的なことのほかにも、今後さまざまな発見が期待できる領域だと思います。また、地元の画家を研究しているので、自分の出自に根ざしたことをしているという実感があります。

●同じ職業を目指す学生に、アドバイスをお願いします。

大学院を修了しているので当然ではあるのですが、修士論文は書いていてよかったです。
元々事務系行政職として採用されたので、通常であれば研究職(学芸員)に区分が替わることはありません。修士論文を書いていたからこの異動があったと思います。美術史に携わるのは5年ぶりで、かなり時間が空いてしまったのですが、修論を書いたときの経験や考え方が今の自分を助けてくれています。

一方、在学中に学芸員の資格は取得しておくべきでした。
現在は幸運にも研究員という肩書きで学芸員と同じ業務ができていますが、資格を保有していればもう少し早く今の状況があったかもしれません。あと、多様な人と交流し、社交力を高めておけばよかったとも思います。学芸員は来館者や地域の子ども達、お招きする講師や資料の所蔵者など、さまざまな主体と関わり合う仕事です。そして、それぞれにそれぞれの接し方が必要です。実際に学芸員になってからもこうした能力を磨いていかなければならないのですが、早いに越したことはないと思います。
ちなみに学芸員資格についてですが、「学芸員資格認定試験」により取得する方法があります。2年間(修士の場合)の実務経験を積んだ後、文科省で面接を受けるというものです。遅ればせながら、私はこれを利用して資格を取得しようと思っています。将来私と同じ状況に置かれる方もいるかもしれないので、ご参考まで。

長くなってしまいましたが、この文が少しでも学生のみなさんの進路選択の役に立てば幸いです。


[ 文責、聞き手:森万由子 ]

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