Research|研究概要

研究テーマ

都市と美術に関わる諸問題の多角的視点による調査・考察・研究

分野:文化

研究概要

都市と美術の関係を多角的・横断的に考察するのが当研究所の目的である。
都市の問題は、土木、建築、デザイン、美術、防災、哲学など、理工学から人文学の分野まで、多様で幅広い要素を含んでいる。そのため、それぞれ個別の領域のなかで研究されるだけでは、とらえきれない領域横断的な課題が少なくない。
ここではとくに、都市について「美術」の視点から考えることで、人びとが都市において豊かに暮らすための根源的問題について考察してみたい。
そもそも都市と美術の関係は微妙で、一筋縄ではいかない。たとえばすばらしく景観デザイン的に美しい街が、人びとにとって暮らしやすいとは限らないだろう。また美術館が多く建ち並べば、人びとの心が豊かになるというわけでもない。かつて、都市に生まれた人びとは、どのように生き、何が、人びとに豊かで幸せな暮らしをもたらしたのだろうか。視覚的イメージや歴史、文学から考察・研究することは、その答えを教えてくれるにちがいない。
自然災害、環境汚染など、都市生活者をとりまく状況は、今日、困難ななかにある。現在、東京は一方ではオリンピックを、他方では大地震やテロまでをも視野に入れつつ、再生が試みられつつある。その意味で本課題は今こそ、もっとも今日的で身近なものとして浮かび上がってくる。こうした差し迫る現実的問題を視野に入れつつ、美術を核に多角的な視点から都市について研究するとは、すなわち、都市における現実や都市づくりの実践と、そこでの豊かな暮らしという、いわば、「もの」と「こころ」をつなげる研究であり、そこに本研究の目的がある。
ここでは具体的に「都市の表象と精神性」、「都市のなかのアート作品」、「都市の空間デザインと街づくり」の3つの大きな柱を設けて研究を行う。

(1)都市の表象と精神性
都市のかたちとそこに生きる人びとが、絵画や彫刻など美術作品においてどのように表象されてきたのか。作品を紐解くことで、都市生活とは何かを問う。またそこに生きる人びとの精神性の表われについても、歴史的考察も視野に入れて探究する。

(2)都市のなかのアート作品
都市空間における美術の存在とその意義を探る。美術館、ギャラリー、パブリックアートなど、都市のなかで美術はどのような意味を担うのか。また建築や土木におけるデザイン的要素は、何をもたらし、どのような美術的価値があるのか。都市とアートをつなぐ問題について考える。

(3)都市の空間デザインと街づくり
都市において、人びとの生活空間はどのようにあるべきか。利便性、防災、景観、心地よさなど、現実的な生活と美的要素とはどうかかわりあえるのか。都市における街づくりの問題を、実践および歴史など、多角的視点から考える。

以上の研究を行うにあたり、美術、文学、哲学、建築、社会学、の各分野を専門とする研究所員・顧問から研究所を構成することで学際性を保持する。
さらに関係する分野の招聘研究員を国内外から招き研究活動を行うことで、研究の幅を広げ、質の向上を図ると同時に、研究活動や成果について広く学外に発信することを目指す。

メンバー

【顧問】
長田 攻一(早稲田大学名誉教授)

【研究所員】
坂上 桂子(文学学術院教授)
宮城 徳也(文学学術院教授)
塚原 史(法学学術院教授)
守中 高明(法学学術院教授)
古谷 誠章(理工学術院教授)
藤井 由理(理工学術院教授)
山田 隆行(文学学術院助手)
金 敬黙(文学学術院教授)
池田 理哲(理工学術院助手)
河野 昌広(文学学術院助手)
山田 茉委(文学学術院助手)

【招聘研究員】
大石 久和(一般財団法人国土技術研究センター国土政策研究所長)
GRULOIS GEOFFREY(ブリュッセル自由大学建築学部教授)
慎 重進(成均館大学建築学科教授)
冨田 章(東京都ステーションギャラリー館長)
FRANGVILLE VANESSA(ブリュッセル自由大学専任講師)

★都市と美術研究所ホームページ

にて、より詳細な内容をご覧いただけます。