【学部】ギャラリー巡り(銀座・京橋地区)

投稿日:

 2025年5月20日、銀座・京橋地区のギャラリーを巡り歩き、計7つの展覧会を訪れました。

 銀座メゾンエルメス フォーラムで開催されていた「スペクトラム スペクトラム」では、個性的な7名の作家たちによる作品が紹介されていました。絵画、陶器、インスタレーションなどその作品形態は多岐に及び、私たち鑑賞者が自身の身体を通じて、それぞれの作家や作品同士が描き出す真実と虚構、幻想・幻視、反射などの〈あいだ〉の空間を垣間見ることのできる展覧会となっていました。

 
 TODA BUILDHING「ART POWER KYOBASHI パブリック・アートプロジェクト」では、複数の作家の三次元的なパブリックアート作品が展示されていました。持田敦子《Steps》は、いくつもの螺旋階段が天井からつるされ、無限に伸びていくかのような空間の広がりを見せていました。オフィスのロビーという堅い印象を抱いていた場所に足を踏み入れたとたん、美しい曲線を描き、実用性から切り離された階段の姿が目に飛び込んでくる体験は新鮮なものでした。

 
 Taka Ishii Gallery「森山大道/セイヤー・ゴメス|Hellooooo」は、写真家の森山と画家/彫刻家のゴメスによる2人展です。それぞれが作品を通じて、東京とロサンゼルスの都市表現を試みています。森山の写真から見る東京は、荒々しいブレや揺らぎからどこか現実味に欠け、フィクションの世界かのように感じられました。ゴメスがフォトリアリズム・ペインティングにより描き出すロサンゼルスの風景は、精密な筆致からまるで現実を写し取った写真かのように鑑賞者の目の前に現れていました。

 
 Yutaka Kikutake「小林エリカ、ドレーヌ・ル・バ、鈴木ヒラク|形象 Keisho」では、3人の作家が多彩な媒体を通じ、歴史、記憶、感情などの不可視な物事をかたどる実践が紹介されていました。埋もれてきた歴史や人々の記憶、歴史に対する人類の責任といった概念が作品によって輪郭を与えられ、目に見えるかたちでその場に存在しており、それぞれの作家にとって「形象」とはどのような行為を意味するのかゼミ生同士で考えを深め合いました。

 
 KOSAKU KANECHIKA「水上愛美|Dear All Our Yesterdays」では、水上の新作ペインティング約17点が展示されていました。水上の作品では、神話や伝承から引用されたイメージが砂の混ざった顔料で塗りつぶされ、さらにその上から新たなイメージが何重にも重ねられています。描かれたイメージを紐解いていく中で、何層にもわたって重ねられた図像が内包している時間の集積を感じ取ることができました。

 
 ギャラリー小柳「ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレス・ミラー|Small Works」では、カナダ出身のアーティスト・デュオである2人によるアッサンブラージュの作品群が展示されていました。作品の多くは廃品などから作られた小さな玩具のようなもので、ボタンを押すことで音が鳴ったり動き出したりする仕組みとなっています。ボタンを押すという行為によって作品と鑑賞者がつながり、作品を通じて奇妙で不穏な世界に引き込まれるかのような不思議な体験をしました。

 
 POLA ANNEXでは「鈴木ヒラク|海と遺伝子」が開催されていました。会場には、連作《海と記号》が鑑賞者を取り囲むようなかたちで並べられています。キャンバスを覆う深い青とその上で躍動する銀の色彩は、深海で湧き上がる生命力や宇宙の広がりを想起させ、神秘的な空間を演出していました。


【文責:三浦佑亮】

コメントを残す